キャブ車のタペット調整(バルブクリアランス調整)を行う【GN125 2F】

SUZUKI GN125-2Fをもとにタペット調整を行う記事です。他の車種と比べても基本的な構造は変わりませんが、使う道具が異なります。この記事ではタペット調整の基本から、調節方法に関して説明をしていきます。

タペット調整とは

まずは、タペット調整について説明していきます。

SUZUKI GN125-2Fをベースにします。タペット調整とは下図でいう、赤丸の範囲のクリアランスを調節することを指します。ここはエンジンの奥まった位置にあり、直接確認が出来ない場所でもあります。

その為、ロッカーアームとバルブシャフトの隙間を調整することがバルブクリアランスの調整に繋がります。

クリアランスの調整にはシックネスゲージを使って確認します。

MEMO
シックネスゲージとは隙間の間隔を測定する工具です

ゲージを差し込めない、もしくはゲージを差し込んでも硬くて動かない場合はクリアランスが狭いということです。その場合は適切な隙間になるように調節してあげます。

GN125 2F
吸気:0.04~0.07
排気:0.13~0.18

  

なぜバルブのクリアランスが必要なのか

バイクのエンジンはシリンダー内でガソリンを気化し、爆発させてピストンの上下運動を行います。上下運動は回転運動に変換され、チェーンを動かしてタイヤを回す動きに繋がります。

ガソリンを気化し、点火することで爆発させる訳ですが、それにともない熱を持つことになります。バルブクリアランスは、ピストンが熱膨張した際に許容するための隙間となり、この隙間がないと膨張したときに必要以上に接触し、お互い磨耗しながら部品が動くことになります。適切な隙間は部品の摩耗を避けるためにも大切な寸法なんです。

  

タペット調整によるエンジンのメリット

ここでエンジンのピストンの動きを確認します。

ピストンは上下運動を繰り返す中で、吸気→圧縮→点火→排気を行う動きをします。そして、同じサイクルを繰り返します。爆発後の排出するガスを排出する必要もあれば、空気の入れ換えを行う必要も出てきます。また、気化したガソリンを圧縮するのもピストンの動きです。

実はこのピストンの上下動がキーポイントでして、タペット調節がされていないバルブはガス漏れの原因(ガスを圧縮しきれない、など)となる場合があり、性能を発揮することが難しくなります

  

必要な道具の紹介

メガネレンチ8mm~9mm(車種により異なります

MEMO
GN1252Fは10mmのメガネレンチです

タペット専用調整工具

車種により異なりますが、GN125 2Fではマイナスドライバーで調整します

  

タペットを調整する

タペット調整を行なっていきます。

タペット調整前はこんな音

タペット調整を行う前、エンジンから金属がぶつかるような音がするとタペットの調整が必要です。

これを一つの目安としましょう。

  

タンクを取り外す

タペットを調整する際に、エンジン上部にあるパーツを調整するので、タンクがあると作業ができません。タンクを外します。

コックを手動で切り替えることができるのであれば、OFFの位置にしてガソリンが出ないようにします。

コックとキャブの間のホースを外す際、ホース内のガソリンが出ますので、下にウエスか何かを敷いておきましょう。

  

プラグを外す

後の作業でクランクを回す作業がありますが、その際にプラグを抜いておくことで作業がしやすくなるので、プラグを外します。

ピストンが上下する際に圧縮の工程がありますが、空気の逃げ道を作るためにプラグを外しておきます

プラグを外す工具は車載工具にあります。

合わせてプラグの焼け具合も確認しましたが、被りもなく、良い状態でした。

  

ピストンを圧縮上死点に合わせる

クランクシャフトを回してピストンが圧縮上死点になるところで止める作業を行います。

クランクを回すた目にはここのキャップと

クランクについている目印を確認するため、ここのボルトを外します。

MEMO
GN125-2Fは10mmアーレンキー、17mmのソケットで外せます

ピストンを圧縮上死点に合わせるため、クランク軸をソケットで、反時計周りに回します。

MEMO
GN125-2Fは14mmのソケットで回せます
MEMO
GN125-2Fは、クランクに白いマークがついているので、これが見える位置に合わせると上死点です
圧縮上死点で止める理由
ピストンが一番上にある状態を圧縮上死点と呼びます。上死の位置はロッカーアームがバルブを叩く位置となります。この状態でのクリアランスを測定することが、バルブのクリアランスを調整する動作へと繋がります

  

シリンダヘッドカバーのキャップを外す

GN125 2Fの場合は17mmのメガネレンチで外します。前後に2箇所あるので、両方外します。

 

シックネスゲージで隙間を確認する

シックネスゲージで現状の隙間のクリアランスを確認します。

シックネスゲージをロッカーアームとバルブの間に差し込み、クリアランスを確認します。

MEMO
最初はシックネスゲージを隙間に入れるのが難しいです。0.1mmぐらいのしっかりしたプレートから確認するのがオススメです

シックネスゲージを挿入したら、小刻みに前後移動させます。この時の感覚が「羊羹を切るようなイメージ」が理想とされています。

隙間に刺すことができれば、写真のようにプレートの先端に傷が付きますので、一つの目安としましょう。

車種によりクリアランスは異なりますが、

GN125 2F
吸気:0.04~0.07
排気:0.13~0.18

が理想とされているので、吸気は0.5mm、排気は0.15mmのゲージを挿して確認しました。

MEMO
吸気は後ろ、排気は前となります
POINT
クリアランスがないと、シックネスゲージが動きません。吸気側に0.15のシックネスゲージがスッと入るなら、クリアランスとしては大きいってことですね

バルブのクリアランスが必要であれば、ロッカーアームについているネジを調整します。

メガネレンチでナットを緩め

マイナスドライバーで調節します。その際に、ナットも供回りしますので、先ほどのレンチで押さえておきましょう。

MEMO
ナットを緩めた状態であれば、ロッカーアームをマイナスドライバーで持ち上げて、シックネスゲージを挟むと確認がしやすくりなります。

ネジを締めこんで、羊羹を切る感覚になるところでナットを締めこんで、調節は完了です。

注意
締め込みすぎると、シックネスゲージが動きません。これはクリアランスがシックネスゲージの厚み以下ということになります

最初は感覚がつかみにくいかもしれませんが、しばらく試行錯誤しているとなんとなくの感覚はつかめてきます。

    

元に戻して終了

エンジンのキャップを元に戻し、タンクをセットすれば完了です。ガソリンのホースと、コックをONにするのをお忘れなく!

  

タペット調整はエンジンを長期に渡り良コンディションにする

タペット調整はエンジンに関わる作業なので、苦手意識もあるかと思いますが、エンジンの構造を理解できる良い機会です。

バイク屋で調整してもらうことも可能ですが、ユーザーでメンテナンスできればバイクの異常にも気がつきやすいですし、何より対処できるスキルが身につきやすいです。

この機会に愛車のタペット調整について調べてみるとは良い機会ではないでしょうか。


参考文献

https://aibou-items.com/gn125-tappet-clearance/

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